MARS Interview: 代表 大野正樹「食品ロスを減らせば、飢餓はなくせる」

2024/01/15

INTERVIEW

MARS Interview: 代表 大野正樹「食品ロスを減らせば、飢餓はなくせる」

2024/01/15

INTERVIEW

MARS Interview: 代表 大野正樹「食品ロスを減らせば、飢餓はなくせる」

2024/01/15

INTERVIEW

技術と食品ロスが身近にあった幼少期

昔から技術への興味はありました。子どもの頃はプラモデルが大好きでしたし、学生時代にはオートバイをバラバラに分解して組み立て直したりしていました。仕組みや構造を理解して突き詰めたい、という性格はずっとありますね。

また実家が島根県で豆腐屋をやっていて、小さい頃から「まだ食べられるのに廃棄されてしまう」といった状況を目の前で見ていました。当時生産者がスーパーに卸すときには、注文が入った分を納品する仕組みではなかったので、品切れするのもだめだし、売れ残っても買い取ってもらえないので廃棄になってしまっていたんです。だから、まだまだ食べられるものでも捨てることになりもったいない、食品が保存できればこんな問題はないのにと。なので、食品の保存技術には昔から興味がありました。

食品保存技術の世界へ

今でこそ家族のような中小企業や、親戚のような農家・漁師さんの助けになりたいと思いますが、この業界に入ったのも、ひょんなことからでした。昔からずっと強い思いがあったと言えたらかっこいいですけど。

就職のタイミングで、製氷機や冷蔵庫など業務用の厨房機器メーカーであるホシザキに入社して、冷蔵庫の開発研究に取り組み始めました。元々自分の性格的に物事を突き詰めたいという気質があったので、やり始めたらどんどんはまっていったような形です。従来の冷蔵庫開発では消費電力を少なく、フロンを使わない冷蔵庫を目指すものがほとんどで、食品を長持ちさせる冷蔵庫の開発は行われていませんでした。ですが食品によって最適な温度や湿度は全然違うんですね。だから食材に合わせて冷蔵制御をすることで、長持ちさせることができる。私は家族を見てきたこともあり、こういった食品を長持ちさせることがやりたいなと。それで食品の研究所に入り、生化学について学ばせてもらいました。

電場技術との出会い

電場技術に取り組み始めたのは、電機メーカーからの出向で電場技術のベンチャー企業に参加した時ですね。電場技術自体は昔からあるんです。ただ企業間に食品の保存に関して根拠のない電圧の戦いがあって、どこも電圧だけに注目して研究開発していました。でも実際のところ、電気はとても複雑な構造をしているんですね。電圧だけでなく、もちろん電流や周波数もある。いろんな要素があるのに、本当に電圧だけが要因で食品がおいしくなったり長持ちしたりするのか?と私には疑問で。だから自分で研究をし始めて、電圧だけが要因ではないということがある程度わかったので独立しました。同時に別の会社で、あるブランドの研究開発長をしていました。今はMARS Companyのライバルですね。

電場に一番興味を持ったのは、地元島根の中小企業さんが新しい商品をつくる1つのツールになると思ったから。蔵番(電場冷蔵庫)は、保存しておくだけで食品を熟成させ、ものによっては味をがらっと変えることができます。同じ製造ラインでつくったものを1つは普通の冷蔵庫、1つは蔵番に入れるといっただけでバリエーションを持たせることができ、製造ラインを複数持つのが難しい中小企業さんの可能性を広げられる。これが電場冷蔵庫を開発したいと思った経緯です。

あとは、消費期限の側面もあります。普通の冷蔵庫は、食品を入れたタイミングから劣化が始まるので消費期限のカウントがスタートしますが、電場冷蔵庫はまだ冷蔵庫の中で加工・製造している段階となるので、消費期限のカウントが始まらない場合があるんです。なのでうちの両親を例に言うと、豆腐を毎朝つくっていたのが、電場冷蔵庫で消費期限が延ばせることで2日にいっぺんでよくなる。生産効率を上げることができるというのが元々やりたかったことですね。

これからは生産者が強くなる時代

食品保存への思いが強くなったのは、食品の会社で研究室に入ったときでした。日本が中国を筆頭に、外国に対して食材を買い負けてしまうんです。日本の国力が相対的に弱くなっていることに危機感を感じました。長い歴史を振り返っても、農業の強い国が文明を発展させてきましたよね。1次産業が国や社会を支える基盤になっていて、食料が安定すると国も安定する。1次産業がしっかりしているとそれに付随して他の産業も成長でき、国の生産力が高まると思うんです。だから、生産者が強くならないと国力が強くならない。1次産業が衰退した国は弱くなると思います。

これからは生産者が強くなる時代で、MARS Companyもそのために生産者の力になりたい。私は家族が豆腐屋をやっていたり、農業や漁業をやっている親戚もいるので、特にその思いが強くなりました。私たちの食品保存技術で日本の良いものを高く買ってくれる国に持っていく。そうすることで、1次産業の収入面や担い手不足の現状を変えられるのではと思っています。

エンジニア視点で描く未来と自分たちの原点

いち技術者としては、非結晶化の凍結技術が実現した時が「やりたいことを達成できた時」ですかね。すぐにはできないけど、将来的にはできると思っています。今の凍結技術は、再凍結・再解凍が繰り返されることで凍結させるもので、その際に血小板が壊れてしまう。一方で、非結晶化の凍結技術は凍結・解凍のときに細胞が壊れるのを防げる技術で、マイナス下で保存できるようになります。電子のコントロールができると腐敗を止められるので、食品の長期保存が可能になる大きなパラダイムシフトですね。私は、電場もそれを可能にする技術の一つになるだろうと思っています。

会社としてはただ、技術を一歩ずつ前に進めていく。世界の食糧廃棄量13億トンのうち、日本では600万トン廃棄していて、世界の食品ロスの0.4%削減で飢餓をなくせると言われています。ここを自分たちのような技術を発展させていくことで、食品の生産・サプライチェーンを効率化し解決したい。MARS Companyは食品の長期保管を実現する会社であり、蔵番にこだわっているわけではありません。食品ロスをなくせるのであれば、どんな手段にでも挑戦していくつもりです。「食品ロスをなくしたい」が私たちの原点でありゴールです。

MARS Companyでは、一緒にフードロス削減に取り組むパートナー様とのコラボレーションを楽しみにしています。

詳しくはお気軽にお問い合わせください。

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