蔵番・sea snowの海外事例
2024/12/23
COLUMN
蔵番・sea snowの海外事例
食品の鮮度保持技術として注目される「蔵番」と「sea snow」は、アジアやアフリカ地域での導入事例を通じて、その有用性と可能性を広げています。以下では、カンボジア、ベトナム、モロッコにおける具体的な活用事例をご紹介します。
APOによる蔵番コンテナおよびsea snowの寄贈プロジェクト
アジア生産性機構(APO)は、アジア太平洋地域における生産性向上を目的に活動する国際機関であり、 持続可能な社会経済発展に貢献している日本の外務省管轄の組織です。
特にコロナ禍において、物流や市場経済の停滞が、新興国における食材ロスの拡大を引き起こしました。これに対処するため、日本の新しい技術を活用したソリューションを新興国に提供するプロジェクトがAPOを主体として立ち上がり、「蔵番コンテナ」と「sea snow」がカンボジアおよびベトナムに寄贈されることとなりました。
カンボジアの事例:オーガニック野菜・果物と海産物の鮮度保持
カンボジアでは、主にベトナムから輸入される野菜、果物に依存していましたが、輸送中の鮮度劣化や農薬の問題が品質に影響を及ぼしていました。そこで、国内産オーガニック野菜・果物と、高鮮度の海産物をプノンペン市内で普及させるため、プノンペンに蔵番コンテナを設置しました。sea snowは湾岸都市に設置し、水揚げ後すぐにsea snowを詰めプノンペンへ出荷できるようにしました。
ベトナムの事例:高付加価値のマグロ輸出
ベトナムでは、マグロの高鮮度輸送の実現を目的としてPhu Yen省に蔵番コンテナとsea snowを設置しました。これまで加工品のみの輸出に留まっていた低付加価値の流通構造を改善し、高付加価値のチルドマグロの輸出を目指しています。このモデルは、地元企業と協力しながら、ベトナム国内外での競争力向上に寄与しています。
モロッコの事例:農水産物の高付加価値化と輸送効率の向上
モロッコでは、JICAが実施する中小企業海外展開支援事業に採択され、農業・漁業海洋省や国立海洋漁業研究所(INRH)と連携し、蔵番とsea snowを導入しました。このプロジェクトは、日本政府の支援を受けたODA事業として進行。主にラバトやアガディールを拠点に、鮮魚や農産物の鮮度を長期間維持し、ロス率を大幅に削減することで安定した食料供給を目指しています。
また、農水産物の高付加価値化による競争力の強化にも寄与することが期待されています。ニーズの高いヨーロッパ市場には、高鮮度を維持した農水産物の出荷量増やすことを目指し、コールドチェーン未発達のアフリカ市場においては、コールドチェーンの先進事例を確立、市場拡大を目指しています。
共通の成功要因と未来への展望
カンボジア、ベトナム、モロッコでの導入事例を通じて、蔵番とsea snowは、単なる鮮度保持技術に留まらず、地域経済の発展や食品ロス削減に、大きく貢献することができました。特に、コールドチェーンの未発達地域での活用においては、国際的な食料供給の安定化や輸送効率向上に繋がりました。今後は、さらに多くの国や地域に蔵番とsea snowを導入することで、これまで以上に食品ロスの削減を実現し、世界的な食料不足や飢餓などの課題へ寄与していきたいと考えています。