浸透圧を利用したsea snowの鮮度保持
2024/12/17
COLUMN
浸透圧を利用したsea snowの鮮度保持
水産物の鮮度保持は極めて難しく、特に水揚げ後から消費者に届くまでの物流工程において、その品質をいかに維持するかが、流通業界全体の重要な課題となっています。これに対し、当社は「浸透圧」に着目し、水産物の鮮度保持に応用する方法を追求しました。ここでは、浸透圧の基本概念と、その特性を利用した水産物の鮮度を保つ雪状の氷「sea snow」をご紹介します。
浸透圧とは?
浸透圧は、半透膜を介して溶媒(例:水)が濃度差を解消するために移動する際に生じる圧力のことです。半透膜は溶媒を通す一方で、溶質(例:塩分子)を通さないため、溶媒が濃度の低い方から高い方へ移動しようとする力が働きます。この現象は、細胞や生体組織の水分バランスを保つ基本原理として機能し、動植物の生存において極めて重要な役割を果たしています。
浸透圧の基本概念
浸透圧の概念を理解するためのポイントを以下にまとめます。
半透膜の役割
半透膜は、水などの溶媒分子を通すが、塩や糖などの溶質分子は通さない特殊な膜です。この性質が濃度差を生み出し、浸透圧を発生させます。濃度差と水分移動
溶液の濃度が異なる場合、低濃度側の溶媒が高濃度側に移動します。この移動による圧力が浸透圧です。たとえば、塩分濃度が異なる水溶液を膜で隔てた場合、塩分の高い方へ水が移動します。細胞と浸透圧の関係
動植物の細胞では、体液の濃度が一定に保たれることで正常な機能が維持されています。濃度差が大きい溶液に細胞が触れると、水分が流出・流入し、組織が損傷することがあります。
浸透圧と魚の鮮度保持の関係
魚の体液の塩分濃度は約1%で、人間の体液と同様です。しかし、従来の冷却用の氷や溶けた水は塩分濃度がほぼ0%であるため、魚がこれに触れると浸透圧の差によって細胞の損傷及び体液流出が発生してしまいます。この現象が魚の身質に悪影響を与え、以下のような問題を引き起こします。
体液の流出による変色
浸透圧差によって水分とともに色素が流れ出し、魚が白く変色します。身質の劣化
浸透圧の影響で細胞が損傷し、身の質が悪化。これが腐敗の進行を早める原因となります。
sea snowへの応用
この浸透圧の問題を解決するために、MARS Companyが開発したのが「sea snow」です。
「sea snow」は、海水を利用して作られた雪のような氷。その特徴的な性質が、水産物の鮮度を長期間保持することに貢献します。
まずは最適な塩分濃度です。sea snowの塩分濃度は約1%で、これは魚の体液と同じ濃度です。このおかげで、浸透圧による魚体へのダメージを防ぎ、鮮度劣化を大幅に抑えることが可能になりました。
さらに、1%の塩分濃度により、sea snowは約-1℃という低温で、魚が凍らないギリギリの温度を維持します。0℃以上の従来の氷では、酵素分解が進みやすく腐敗が加速しますが、sea snowはこれを防ぎ、高鮮度を長時間保つことができます。
また、この雪状の氷は 溶けにくさも優れています。塩分を含むことにより、通常の氷よりも保冷時間が長く、効率的な鮮度管理が可能です。そして、雪のように柔らかい形状のため、輸送中に魚体を傷つけるリスクが少なく、美しい状態を保てるのも魅力の一つです。
まとめ
浸透圧は、魚の品質保持において重要な役割を果たしています。MARS Companyの「sea snow」は、この原理を応用した塩分濃度を魚の体液と同じ1%に保つというシンプルなアプローチが、魚の鮮度を高いレベルで維持し、輸送効率や環境への配慮にも大きく貢献しています。
sea snowによる水産物の長期鮮度保持は、物流や食品輸送の未来を切り開く鍵です。これからもsea snowが多くの業界で活躍し、持続可能な社会の実現に寄与していけるよう、努めていきます。
弊社では、利用する氷の量に応じて最適なプランをご提案をさせていただきます。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。